ぷくぷく醸造伝統と異文化のケミストリーが浜通りに活力を生み出す

失われた酒蔵や田畑を覚醒させ、人が集まる「ハレの場」づくりへ。小高地区再生の大きなキーポイントに。

お酒が発酵して「ぷくぷく」と泡立つ様子と、福島の「ふく」をかけて「ぷくぷく醸造」。魔法をつかってお米をお酒に変えていくイメージをたぬきのキャラクターに込めている

ぷくぷく醸造

伝統と革新が溶け合う、新しい地酒のかたち

南相馬の米、水、微生物、空気で醸したフラッグシップアイテムの「#ODAKA 酵母無添加 木桶どぶろく」(500ml・2,090円)

江戸時代には宿場町として栄えた南相馬市小高地区。ここにはいま、日本酒の常識を心地よく揺さぶる酒蔵があります。2022年創業、ファントムブルワリーとして活動を続け、2024年11月に自社醸造所を構えた『ぷくぷく醸造』です。代表の立川哲之さんが掲げるのは、「異文化との境界線を溶かす」という挑戦的なコンセプト。そこには、伝統への深い敬意と、未来への確かな情熱が息づいています。
東京都出身の立川さんが福島と出会ったのは、筑波大学時代の震災ボランティアがきっかけでした。幾度となく現地へ通う中で、東北の食と酒の豊かさに魅了され、同時に震災によって地元の酒蔵や田畑が失われた現実を目の当たりにします。
「福島に恩返しをしたい」という想いは、彼を醸造の世界へと突き動かしました。大学卒業後、一度は企業へ就職するも、酒造りへの道を諦めきれず退職。宮城県閖上の佐々木酒造店で修業を積み、その後、南相馬市の「haccoba -Craft Sake Brewery-」の初代醸造責任者を経て、自身の理想をかたちにするため『ぷくぷく醸造』を立ち上げました。『ぷくぷく醸造』の最大の特徴は、「全量浜通り産の米」を使用することにあります。震災後の避難指示解除から時間が経過しても、依然として低い水準にある営農再開率。『ぷくぷく醸造』は、地元の米を付加価値の高いお酒に変えることで「お酒を通して、福島の沿岸に田畑を増やす」ことを目指しています。
地元の農家により育まれた米は、あえて削りすぎない低精白で醸されます。それは、土地の力、そして米が持つ本来の旨味を余すことなく瓶に詰め込みたいという、地域への誇りの表れでもあります。

2022年からファントムブルワリーとして活動。2024年秋に南相馬市小高地区に角打ちを併設した醸造所を開いた
角打ちスペースでは「ぷくぷく醸造」蔵出しのお酒とともに、東北のクラフトビールやワインなども楽しめる。地域産の素材を使った「おばんざい」がアテ
たぬきのキャラクターには、ファントムブルワリー時代の「ドロン」する神出鬼没さも込められており、Tシャツやキャップなどのグッズも人気
古民家をリノベーションした酒蔵の玄関先には酒林。秋冬を迎え、お酒が充分に熟成したことを示す茶色に

野生酵母が描き出す、唯一無二のテロワール

「#ODAKA 酵母無添加 木桶どぶろく」は、すっきりとした甘みとマスカットのような香りが特徴。福島県産の杉と竹で作られた木桶を発酵容器として使用

『ぷくぷく醸造』の名を世に知らしめたのが、ビールの原料であるホップを日本酒の醸造工程に取り入れた「ホップサケ」です。これは単なる奇抜なアイデアではありません。かつて東北のどぶろく造りでは、酵母を呼び込む際、ホップの近縁種である「唐花草」を用いる伝統的な技法(花もと)が存在しました。『ぷくぷく醸造』は、この古の知恵を現代のクラフトビールの技術と融合。日本酒の甘みと、ワインのような酸、そしてホップ由来のマスカットやライチを思わせる爽やかな香りが同居する、全く新しい味わいを生み出しました。伝統的な「どぶろく」のテクスチャーに、ワインやビールのエッセンスが溶け合うその一滴は、まさに「境界線を溶かす」お酒そのものです。
さらなる特徴は、培養された酵母を添加せず、野生酵母のみによる自然発酵を全量で行っていること。野生酵母と野生乳酸菌が醸す味わいは、まさに福島の風土を液体へと昇華させた「究極の地酒」と言えるでしょう。
『ぷくぷく醸造』が醸しているのは、福島の美しい田園風景であり、新しい文化が芽吹く地域の活力。グラスを傾けるたびに、浜通りの風が吹き渡るでしょう。

根本有機農園が有機栽培で育てた酒造好適米「愛国」を主原料にした新作を仕込み中。小高地区での「愛国」の栽培は70年ぶり
少量多種の醸造で、豊かな発想の味わいを次々と実現。この小さな酒蔵から、驚くほど多彩なお酒が生まれている
伝統的などぶろくから超現代的なクラフトサケまでを横断する酒造りをしている「ぷくぷく醸造」。それを支えるのが「ここ小高でしか醸せない酒を」という確固たる信念

ぷくぷく醸造

  • 住所福島県南相馬市小高区仲町1丁目117
  • アクセスJR小高駅から徒歩で約10分
  • 角打ち営業時間木・金・土曜18:00〜22:00(LO21:30)

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