大堀相馬焼 陶吉郎窯故郷に伝わるものづくりの火を絶やさない。歴史を守り続け、100年先に残すための復興を。

地域に根差した産業の復興を目指し、精力的な作品づくりとコミュニティづくりを続ける向上心に学びましょう

新築のギャラリーは大堀相馬焼の復活拠点。近藤 学さん、賢さん親子の作品が並ぶ。

大堀相馬焼 陶吉郎窯

大堀の地で、大堀相馬焼を取り戻す

信念の人・近藤 学さん。苦難に折れず、己のやるべきことに忠実に復興の道を歩む。

発災当時のことを、近藤 学さんは昨日のことのように思い出します。「庭木にしがみついたまま、作品が棚から落ちて壊れる音をただただ何もできずに聞いていた」と。翌12日には福島市へと避難しますが、避難生活が長くなるであろうことは既に予感していたそうです。幸いにも知人の好意で一軒家をお借りすることができましたが、近藤さんは何もせずに座っていることができませんでした。偶然、数寄屋造に造詣の深い建築会社さんのモデルハウスを見た時、作業場があるのに気づいて“貸してもらえないか”と交渉。快諾をいただくと早速土をこね、窯に火を入れました。7年後の2018年4月、登り窯の用地を求めていわき市四倉へと移り開窯、ようやく落ち着いたかと思いましたが、1年も経たないうちに「ここではない」という違和感が心を占めていたそう。
「自分にとって、大堀相馬焼は大堀の地でなければ魂がこもらない。大堀の地に、また窯を開く」
決意は固く、2021年には、避難指示解除予告の出た2023年3月31日その日に大堀に開窯することを決めたのです。

大堀相馬焼の伝統釉である青ひびの原料・砥山石を使用した新たな焼きもの「大堀翠磁」

伝統と革新、その両翼で故郷のものづくりの価値を高める

近藤 学さんのライフワークにして無二の個性である大堀相馬焼と象嵌の融合

大変な苦労を経てなお、近藤さんは「作品に物語をつけたくない」と言います。「作品そのもの、それが価値のすべて」だと。大堀相馬焼の伝統的な技法である二重焼(にじゅうやき)、伝統釉(でんとうゆう)による青ひび、左馬のデザインを継ぎながら、我が道をゆく作品づくりも両立。緻密な象嵌により描かれた鳥や植物のある景色は、いきいきとした生命力に満ちています。江戸から明治にかけて用いられた伝統技法・筒書きを日本画家とともによみがえらせ、会津漆器とのコラボによる新たな技法づくりなどにも精力的に取り組んでいます。9棟あった近藤家は、唯一瓦が落ちなかった作業場を残して新設、旧窯場は近藤さんの工房にリノベーションしました。正面の棟はギャラリーで、土間のフロアと畳のフロアが連なります。近藤さんの作品に惹かれ、ここを訪ねる人も増えてきました。
「大堀相馬焼の火を絶やさないためには、産業とコミュニティが必要です。大堀に“ほんとうの大堀”を取り戻すために、自分にいま何ができるか。土に触れながら、日々そのことを考えています」

陶器に漆で文様を描く「陶胎漆器」という技法を使い、会津塗りとコラボ

大堀相馬焼 陶吉郎窯
近藤 学さん

大堀相馬焼陶吉郎窯窯主として1977年より浪江町で家業の陶吉郎窯に従事。改組新第7回日展(2020)特選受賞をはじめ受賞多数。長男である近藤 賢さんも独特の青白磁作品で第61回日本現代工芸美術展(2023)現代工芸理事長賞受賞など、受賞多数。

大堀相馬焼 陶吉郎窯 <大堀工房>

  • 住所福島県双葉郡浪江町大堀字後畑98-1
  • 電話090-2604-9890
  • アクセス常磐自動車道 浪江ICから車で約10分
  • 営業時間10:00~18:00
    定休日:火曜 ※来店の際は要連絡

大堀相馬焼 陶吉郎窯 <いわき工房>

  • 住所福島県いわき市四倉町細谷字水俣75-17
  • 電話0246-38-7855
  • アクセス常磐自動車道 いわき四倉ICから車で約15分
  • 営業時間10:00~18:00
    定休日:火曜、年末年始

地域活性化、伝統の他のスポット#地域活性化#伝統

モデルコースmodel course

share

もっと福島を見たい、知りたい方は