請戸漁港逆境の中で立ち上がる

請戸漁港。着実に船の数は増えてきている。

親潮と黒潮の出会う豊かな漁場の恵みを水揚げする請戸漁港。しかし福島第一原発から6キロに位置しているため、港に近づくこともできない状況になってしまいます。その後、どのように再び立ち上ったのか、再生への道を歩む漁港を訪ねます。

@請戸漁港
双葉郡浪江町大字請戸字中島地先

被災の影響から立ち上がり、再生への道を歩む漁師・漁協の思いを知る。

請戸漁港

請戸の海は宝の海

カレイは市場で評価の高い“請戸もの”の一つ。年間およそ100種の魚が水揚げされる。

「請戸もの」として知られるカレイ、ヒラメ、アイナメ、シラスなど、年間で約100種もの魚が水揚げされる請戸漁港。しかし2011年の震災に伴う津波のため、94隻あった漁船のうち86隻が失われ、港湾施設は使用不能の状態に陥ります。加えて原発事故で浪江町の全町民が避難。漁業者も全国へと散っていきます。

漁業者から有志を募り、特別な許可を得て港に船の状況を見に入ったのが、震災の年の6月。修理すれば使えそうな船をなんとか造船所まで運び、復興へと向かいはじめます。

漁港再開、そしてその先へ

港が使えない間は請戸の海で操業して、近隣の港で水揚げしていたこともあります。請戸港に船を係留できるようになってからは、請戸で水揚げして競りのできる相馬原釜の港まで魚を陸送するなどし、漁への思いを断ちきることなく復興の道を歩み続けてきました。そして、ついに2019年10月に港湾施設、11月に漁港の復旧が完了。請戸港での漁業が再スタートを切りました。現在、漁船の数は震災前の3分の1の29隻。

「浪江町の場合、特に避難先が全国ばらばらで、なかなか町に戻れなかったので、廃業してしまう漁業者も多かったんです。特に避難先の学校から子どもが転校できないという理由で、本来なら漁の中心となる40代、50代が多くやめてしまった」と相馬双葉漁業協同組合請戸地区の玉野真喜さん。

「船が50隻になれば幸せかな」とつぶやく玉野さんの言葉が、徐々に、でも確実に進んでいる復興と、その道程の険しさを物語ります。

相馬双葉漁協協同組合
玉野真喜

震災の年、何代も続いて漁師をしている方が私に『やはり請戸の港で漁をしたい』と言ってきたんです。その頃、相馬や新地は復興が進んでいましたが、浪江は原発20キロ圏内で町に入ることもできない。そこで漁をするなんてとても口に出せない状況だったのですが、その漁師の言葉が私に刺さったんです。そういう漁業者の思いに寄り添うのが漁協の職員じゃないか。港を元に戻さなければ戻る時に戻れない。町や県の関係機関に『復興に力を貸してください』と訴え、そこから復興の一歩が始まったんです。

請戸漁港

港に隣接する荷捌き施設で行われている競りの様子
  • 住所双葉郡浪江町大字請戸字中島地先
  • 電話0240-34-4121
  • その他午前9時から始まる競りは見学可(見学デッキ及び施設外からのみ。事前に連絡を)。漁協職員による説明を希望する場合は可能かどうかを事前に相談してください。

海の恵みと復興を知るふくしま旅

モデルコースmodel course

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