- SDGs×食×復興を知るふくしま旅
- トロピカルフルーツミュージアム フルーツ王国福島に地中熱を利用したバナナが仲間入り
ぽかぽかのハウスの中は、まるで熱帯の風景。バナナの葉がわっさりと伸び繁り、あちらこちらにまだ若い果房が蜜を光らせています。東北の広野町で、あえて困難にチャレンジしたまちづくり会社。「不可能なんてない。そう信じて頑張る姿を見てほしい」。故郷への愛に満ちた、甘いバナナが実っています。
震災・原発事故で被害を受けた農林水産業・観光業の再生に向けた取り組みを学べます。
トロピカルフルーツミュージアム
東北に春を告げるまちで始まったバナナ栽培
真冬でも平均気温が10℃を超え、「東北に春を告げるまち」と呼ばれる広野町。その温暖な気候を活かし、古くから東北では珍しいミカン栽培が行われてきたほどです。2018年に始まったバナナの栽培も、この気候と地中熱を活かした広野町ならではの取り組み。原発事故による全町避難で、広野町は人の暮らしも、農業もすべて失いました。唱歌「汽車」や童謡「とんぼのめがね」に詠われた美しい風景も、一度は荒野となりました。しかし、もういちど美しい故郷を取り戻す力を、町民のみんなを奮い立たせたい。そんな思いが、株式会社広野町振興公社のスタッフたちの心に宿ったのです。
あえて困難に立ち向かう姿勢を見てほしい
「広野町どころか、日本全国の気候風土で考えてもバナナの栽培は相当に困難です。もちろん、当時のわたしたちにバナナの栽培経験はありません。それでも、広野町の100%出資によるまちづくり会社であるわたしたち、行政と町民の間を結ぶ存在であるわたしたちが、困難な事業に必死に取り組む、その姿勢こそが町のみなさんの地元愛や誇りを呼び覚ますのではないか。そう考えて、バナナ栽培に舵を切りました。もちろん、まったく勝算がなかったわけではありません。地中熱は100m掘れば必ず得られるエネルギーですし、岡山県の農業法人ファームが開発した凍結解凍覚醒法と出会うことができた。そうして台湾バナナの系統であるグロスミッチェル種をもとに作り出したオリジナルの品種が、『綺麗』です(幸森 千尋さん)」
「朝陽に輝く水平線がとても綺麗なみかんの丘のある町のバナナ」、略して「綺麗」。長い本名には、かつての広野町の美しい風景が広がっています。この風景を、遠くない未来の風景にするために、幸森さんたちは今日も亜熱帯のハウス内で汗をかくのです。
株式会社 広野町振興公社
総務部長
幸森 千尋さん
広野町出身、1996年入社。「地中熱を利用した農業はカーボンニュートラルへの取り組みとも合致し、安心で安全な国産バナナを適正価格で提供できます。現在は年間で約1万5000本を生産しており、ふたば未来学園高校とのコラボスイーツなども人気です。バナナは樹木ではなく草の仲間ですから、苗を植えて10カ月もすれば収穫が可能になります。緑色のまま収穫したバナナはコンピュータ制御の追熟庫で熟成させるので、最高においしい状態のものを無駄なく味わってもらえます」
トロピカルフルーツミュージアム
- 住所福島県双葉郡広野町大字下北迫字大谷地原58
- 電話0240-23-7704
- アクセス常磐自動車道 広野ICから車で約5分
- 営業時間9:00~16:00
定休日:月曜日(祝日の場合は営業) - その他10名程度以上での見学は事前予約が必要です。